それでもボクはやってない
私は痴漢ではない。
いきなり電車内で捕まった容疑者の常套句っぽくなってしまったが、それでもボクはやってない(とても良い映画だった)。
そんな、容疑者ではないはずの私でも膝を打つ内容が、この本にはあった。
本書の中に、こんなエピソードが出てくる。
痴漢が多発しているという、ある地域でのことだ。
・「痴漢に注意」というポスターではほとんど効果が無かったが、「住民の皆様のご協力で痴漢を逮捕できました。ありがとうございます」に変えたらピタリと痴漢が止まった。
相手(痴漢)の頭の中を「嫌いなこと回避」で想像した結果です。
この話(もっと言えば本書全体)の本質は「相手の視点に立って考える」ということではないだろうか。
もう少し掘り下げて考えると、それは「相手のメリット(もしくはデメリット)を考える」ということだろう。
「痴漢に注意」と書かれていても、相手(痴漢)からしたらほとんど何とも思わないだろう。
でも、「住民の皆様のご協力で痴漢を逮捕できました。ありがとうございます」と書かれていたら?
おそらく、「この地域で痴漢をするのはリスクがある(=自分にとってのデメリット)」と感じ、思いとどまるのではないだろうか。
※決して実体験ではない。
「自転車捨て場」
他にも、例えばこんなエピソードがある。
放置自転車に悩んでいた人が、「ここに自転車を置かないでください」という貼り紙をしたが、全く効果がなかった。
ところが、貼り紙に書く言葉を変えた途端に、放置自転車をする人がいなくなったという。
その言葉とは「自転車捨て場」。
「自転車を置かないで」ではなく、「ここは自転車捨て場です」と書いたのだ。
「ここに自転車を置かないでください」では、視点が「自分(放置自転車をされて困っている人)」になってしまっている。
しかし、「自転車捨て場」と書くことによって、相手(放置自転車をする人)からすると「ここに自転車を置いたら捨てられてしまう(=自分にとってのデメリット)」となる。
それが抑止力となった結果なのだろう。
「芝生に入らないで」ではダメな理由
他にも例えば、こんな事例がある。
芝生が踏まれることに困っており、注意書きの立て札を作る時、どう書いたら人は芝生に入らなくなるだろうか?
ここでも、相手の視点に立つことがポイントになる。例えば、
「芝生に入らないで」→こちらのメリットでしかない。
「芝生に入ると、農薬の臭いがつきます」→相手のデメリットにフォーカスしており、こちらのお願いを聞くことが相手のメリットにつながる。
読書メモ
(※個人的なメモのため、一字一句が本文と同じではありません)
・「ありがとう」と感謝する言葉に人は否定をしにくい。
・名前を言われると、人は応えたくなる。
例→「この領収書、落とせますか?」ではなく「いつもありがとう、山田さん。この領収書、落とせますか?」。
人生は、大きなものから小さなものまで、伝え方で変わります。
就職試験で受かる人と落ちる人がいるのはなぜでしょう?その理由は明快です。その本人をどう伝えたかの違いです。
どんな資格より、まず伝え方を学べ。就職でも、昇進でも、あなたを最後まで守ってくれるのは、「伝え方」。
伝え方や言葉の技術を持っている人は、働いても成果を出せるのです。
人は目に見えるものばかり手を付けたがるから、どうしても資格にばかり気がいってしまうのですが、どちらかというと、伝え方の方こそ差がつくのです。しかも、資格は多くの人が持っているのに対して、伝え方は学んだことがない人がほとんど。勝負はほぼ伝え方やコトバで決まると思っていいでしょう。
お願いは「相手のメリットと一致する」形でつくる。
「イエス」に変える3つのステップ
① 自分の頭の中をそのままコトバにしない
② 相手の頭の中を想像する
③ 相手のメリットと一致するお願いをつくる
単に「4分ほどお待ちいただけますか?」というお店都合のお願いでなく、「できたてをご用意します。4分ほどお待ちいただけますか?」と、私の好きなこと、メリットから話したことで結果を変えました。
「前のお客様が出られるまで、お席でお待ちください」ではなく「お時間がかかってしまうので、ごゆっくりお支度ください」。
人は「決断」が得意ではないのです。一方で、人は2つ選択肢がある時の「比較」が得意です。
全くあなたに興味が無い人がいたとして、その人をデートに誘う時何と言えばいいでしょう。
「デートして下さい」→あなたのメリットでしかない。相手は「決断」しなければならない。
「驚くほどうまいパスタの店と、石釜フォカッチャの店どっちがいい?」→こっちがいい、という比較は非常に簡単にできる。相手の好きなものである上に、選べることで、相手のダブルメリットとなる。
選択の自由をつくることで、よりあなたのお願いが受け入れられる可能性が増えます。
例えばビジネスにおいても、私はアイデアをプレゼンする時に、自信のある一案があったとしても、必ず複数案を持っていきます。「この案どうですか?」というより、「A案とB案がありますが、どちらがよろしいですか?」という方が、相手は決めやすいのです。それは、人には選びたいという本能があるからです。
もともと人は誰も認められたいという本能があります。その証拠に、赤ちゃんが立った時「よくできたねー」と言われると満面の笑みになり、また何度も立とうとします。人間のDNAには「認められたい欲」が組み込まれていて、それを満たすためにはちょっとくらい面倒なことでもやろうと思うのです。
「残業お願いできる?」→あなたのメリットでしかない。
「君の企画書が刺さるんだよ。お願いできない?」→認めているコトバから始まっていることで、面倒くさいこともやってみようとする気持ちが生まれる。
人は「あなた限定」に弱い。
「自治会のミーティングに来てください」→あなたのメリットでしかない。
「他の人が来なくても、斉藤さんだけは来て欲しいんです」→その人の名前を使い「私こそが必要と思ってくれている」と思わせ、心を満たすことで相手のメリットに変える。
子どもには「勉強しなさい」ではなく「一緒に勉強しよう」。(チームワーク化)
「この中で、自分が面倒くさがりやと思う人?」
「この中で、満員電車に乗るのが嫌いな人?」
→「私も一緒です」(本田直之さんの講演)
「ありがとう」と感謝を伝えられると、ノーとは言いにくい。
あなたのお願いを実現させる答えは、自分の中にない。相手の中にある。
「自転車を置かないで」ではなく「ここは自転車捨て場です」。相手の頭の中からコトバをつくれば、相手を動かすことができるのです。
「ノー」を「イエス」に変えるために、お金やモノで釣ることはできるでしょう。だけど、コトバだけでも変えることができるのです。それがコトバの凄い所だし魅力です。コトバをもっと信じてみてください。言葉の力だけで突破することは、できるのです。
私は携帯を配布する担当者にこんなメールを送りました。
「○○様。はじめまして。今度携帯の機種変更だと伺いました。こうやって仕事をサポートして下さる方がいるから私たちが安心して働けるのだと知りました!(「認められたい欲」)ありがとうございます!(「感謝」)携帯の色を選べないとルールで決められているのは知っていますが、もし可能でしたら白を希望します」
あなたのお願いを実現させる答えは、自分の中には無い。相手の中にある。
コトバに高低差をつけてあげれば、エネルギーは生まれるのです。例えば「あなたが好き」より、「嫌いになりたいのに、あなたが好き」の方が高低差があります。ジェットコースターと同じで、高低差があればあるほど、人はぐっとくるのです。
意識して反対のコトバを入れることで、強いギャップをつくり出す。例えば「これは私の勝利ではない。あなたの勝利だ」。これは人々を熱狂させたオバマ氏の大統領就任のコトバ。彼が元々言いたかったことは何でしょう?「これは、あなたの勝利だ」、そう言いたいのです。でも彼は、あえて「あなた」の反対である「私」というコトバをその前に使ってギャップをつくり出したのです。
ギャップ法の作り方
①最も伝えたいコトバを決める
②伝えたいコトバの正反対のワードを考え、前半に入れる
③前半と後半が繋がるよう、自由にコトバを埋める。
「私は味方です」→「誰もが敵になっても、私は味方です」
「ここのラーメンは旨い」→「他の店がまずく感じるほど、ここのラーメンは旨い」
「赤裸々法」はあなたのコトバに体温を感じさせ、時に詩人の様なニュアンスをつくり出すことのできる方法です。つくり方は、
①最も伝えたいコトバを決める
②自分の体の反応を赤裸々にコトバにする
③赤裸々ワードを伝えたいコトバの前に入れる。
「伝えたい話」の前に「クライマックスワード」から始める。「ここだけの話ですが」「これだけは覚えて欲しいのですが」「他では話さないのですが」「誰にも言わないでくださいね」など。
聞き手の集中力は、スピーカーの技術による。どんなに面白くない内容でも、伝え方で興味を湧かせることや、集中させることができる。一方で、面白い内容でも伝え方次第で、相手には平凡に伝わることもある。
まず原則、「人は長文を読みたくない」ことを知ってください。
どんなに長文が読まれないとしても、読み手は出だしの1文だけは読んでくれる可能性が高いです。ですので、極力短いコトバで、先を読みたくなる「出だし」を作りましょう。そして「出だし」に使ったものと同じ「強いコトバ」を最後にも使うのです。こうすることで、書きっぱなしにならず、気が利いた長文にすることができます。
飛ばされない「タイトル」をつくる。人は99%以上の情報をスキップします。
文章の全て「強いコトバ」をつくる技術を入れ込みすぎないこと。
知っておいて欲しいのは、デジタル文字の冷たさです。あなたのメールは、あなたが思っている以上に、相手に冷たく伝わっていることを知りましょう。では、具体的にどうすればいいか。感情が削ぎ落とされる分、コトバで感情を30%増しにするのです。これで手書きと同じレベルになります。具体的には、語尾です。語尾に感情を加えるのです。「書類ご確認ください」ではなく「書類ご確認ください!」「書類ご確認くださいねー」などです。語尾を冷静にしないようにしましょう。何の気なしに語尾を冷静にすると、相手には「怒っているの?」と思われることさえあります。
初めは違和感があると思います。確かに、あなたの気持ちで言えば30%過剰な違和感があるはずです。ですが「コトバは相手のもの」という原則から、受け手にとってみると、30%増量でちょうど手書きと同じくらいの温かみなのです。ですので「違和感OK!」で思い切って書いてみてください。
たった今、あなたの生きているこの瞬間を輝かせるために、人の心を揺さぶるコトバを知っておいて欲しいのです。これから発する一つ一つのコトバ、書くメールが変われば、相手の反応が変わります。あなたの人生も変わるのです。
30%増しで嬉しいから、30%増しで表現するのではありません。順序が逆なのです。30%増しで表現するから、あなたに30%増しの嬉しいことが起こるのです。
まとめ
「なかなか他人が自分の思うように動いてくれない」。
そんなお悩みを持つ方におすすめの1冊です。