「一人旅」vs「ツアー旅行」
旅が好きだ。とりわけ、一人旅が好きだ。
それは、自分が旅に求めるものの中で、「非日常」や「未知」といった要素が大きいからだ。
例えば個人的には、日本人が少なければ少ないほど良いし、日本語が少なければ少ないほど望ましい、と考えている。
そして何より、全てをその瞬間の自分だけの判断で行えるという自由さは、何ものにも代えがたい。
その一人旅の対局にあたるのが、本書の主な舞台となるいわゆる「ツアー旅行」だろう。
本書に関心を持ったのは、同シリーズである『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』を読んで面白かったというのもあるが(『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記(目黒冬弥/フォレスト出版)』を読んで、「半沢直樹」よりも深い銀行員の世界を知る。)、「何でも異なる視座から見ると発見がある」という自分のポリシーによるところも大きい気がする。
また、父親が現役時代、旅行会社に勤めていたというのもあるかもしれない。
読書メモ
(※個人的なメモのため、一字一句が本文と同じではありません)
「出会う人すべては忍耐について教えてくれる先生」
(ジャンポルスキー著『ゆるしのレッスン』)
私の年間の収入を月平均にならすと、およそ月収10万円といったところだ。旅行シーズンのオフはほとんど収入ゼロに近い状態となる。
添乗員は、確認につぐ確認の作業である。
同僚の中には「添乗員のメイン業務はクレーム対応」などと言う者もいる。
ひたすら謝ることも添乗員の重要な仕事のひとつ。
添乗員としての仕事を通じて、多くの人に接してきた。その経験から、確かに顔には心の履歴書という一面があると思う。
確認の電話は参加者をはじめ、バス会社、食事処、観光スポットなど、ツアーに関するところへは全てかける。
添乗員は旅行会社が販売したツアーの最前線にいる人間だ。このようなパニック状態と化したツアーでは、参加者の怒りをもろに浴びる立場にある。時には人柱となることもあるのだ。
「今回のことはもちろんあなたのせいではない。けれども、今回のようなことが起こった時に、ツアー参加者の方々に『これは仕方がない。添乗員のせいではない』と思わせるようにしなければ、この世界では生きていけないよ」
ツアーというのは、トラブルの連続である。いずれも自分のせいではない。とはいえ、自分のせいではない、などと思っていても仕方がないのだ。参加者はツアー内容を楽しみにしている。その気持ちをどう受け止め、どう応えるかが大切になってくるのだ。
数々のクレーム対応で身につけた3つの法則。
1つ目は、トラブルに際しては、落ち着いた態度を取ること。
2つ目は、自分のせいではなくても、参加者の不満を受け止め、頭を下げ、謝ること。
3つ目は、起こった出来事に対して迅速に対処すること。
普通に働いていられることがどんなにありがたいことか身をもって体験した。
(骨折し、松葉杖の生活が1ヶ月続いた時の話)
生き残っている添乗員は、精神的にも肉体的にもたいへんタフな人たちなのである。
修学旅行を扱う会社が成績を伸ばすには、学校回りを頻繁にして、あの手この手で、他社の仕事を奪い取るしかない。奪い取れないまでも、死守しなければならない最低のラインが現状維持である。来年もまた自社で修学旅行をしてもらわなくてはならない。現状を維持するためには、担当している学校だけは横取りされないようにしたい。
修学旅行などの受注型ツアーを扱うのは業界でもトップクラスの会社だ。そういう会社に所属するエリート社員たちがよその会社から仕事を奪うべく、学校を舞台にして仁義なき戦いを繰り広げている。
英語の「トラベル」は、「トラブル」が語源だという。
人間だから誰しも、時にはミスを犯す。そういう時に素直に謝れば、問題にはならないはず。
往々にして、立場の弱い人や目下の人に対して、人間は本当の顔を見せるものである。
群馬(前橋)に引っ越した今は、温泉は生活の中で楽しむ「日常」のものになった。これがこの地に住む最大の魅力だ。
草津、四万、伊香保という名温泉地へ車ですぐに行くことができるのが、この地に住む最大のメリット。柏にも地下をボーリングして汲み上げている温泉施設があった。しかし、群馬の温泉とはモノが違いすぎる。
ガイドによれば、イタリアではサービスを提供する人はいいかげん。そのかわり、その人がサービスを受ける側に回っても多くを求めたりしないそうだ。要するにイタリアの人々は、ほどほどということを心得ているのだ。
長時間労働という点では、旅行業界はどの会社もすさまじい。そしてその中にあっても、Q社は群を抜いている。そのせいであろう。ツアーの準備や精算で会社に行くと、疲労のにじむ社員から、ピリピリした空気が伝わってくる。そのため社内の雰囲気も殺伐としていて、時折お邪魔するだけの私まで気が滅入ったものだ。
まとめ
本書を読んで、これまで全く検討候補として考えたこともなかった「ツアー旅行」に、少し興味が湧いてきた。
実際、日経新聞の週末版によく載っている、ツアー旅行の広告に目が止まるようになった。
昨今話題になることが多い「旅行業界」の裏側も知ることができ、とても興味深く読了しました。