「節約術」よりも「考え方」
最近「ミニマルに生きる」といった風潮が注目されている。
自分に必要な最低限の生活費を把握し、その範囲内で自由度高く生きる、というものだ。
個人的にも、非常に憧れているライフスタイルだ。
そんな関心もあって、この本を手に取った。
しかし、タイトルにある「年収90万円」とは、月にして7万5千円だ。
そんな金額で、日本で最も固定費が高そうな東京で生活していけるのだろうか。
ところが、本書を読み進めるうちに、それは十分に可能なことだとわかった。
しかも、困窮した感じではまったくなく、タイトルの通り、とても幸せそうだ。
誤解のないように記しておくと、本書はいわゆる「節約術」的な類の本ではまったくない。
どちらかというと、「考え方」にその本質がある気がする。
そしてそれらの「考え方」の多くは、「幸せに人生を生きる」ための土台として示唆に富んでおり、とても勉強になった。
抜き書きメモ
(※個人的なメモのため、一字一句が本文と同じではありません)
せっかくニューヨークに行ったのに、自由の女神がどこにあるのかも知らない。マンハッタンにステイしてたのにミュージカルも観ていない。ただ地元のデリや図書館で、地元人のように生活するだけで楽しかった。
図書館はサイコーです。何万冊という本を私のために所蔵してくれている!そう思うと超楽しい。ちょっと家から離れたところに、でっかい本棚を持ってると思えばいいんです。自宅以外に本用のロッカールームをタダで借りてるみたいなもんで、こんなにありがたいサービスはありません。
夕飯を早く食べてしまうと、翌朝の目覚めのスッキリ感がハンパないです。空腹で目が覚める時の爽快感ったら。あの気持ち良さのために、満腹にはしたくない。お腹が空っぽだと体が軽くて動きやすい、というのが実感。わたしは常に腹6分目くらいにしておくと実に調子がいいのです。
動物は秋にたくさん食べて脂肪を蓄えておき、冬眠の直前は何も食べずに胃を空っぽにしておくそうです。胃の中に未消化の食べ物を入れたまま長い眠りに入るのは命取りになるんですって。
寝る前に1日のことを振り返りながら、今日も平穏無事に過ごせてありがたいなー、と思う。
いちばん大切なことは、「どうすれば自分が幸せか?」を、他の誰でもなく、自分自身が知っていること。
10年後って、10年後にいきなりやってくるわけじゃないんです。自分が生きてる今日の、この1分1秒の、小さな取捨選択を1万回、2万回と繰り返して、その積み重ねの先にやってくるもんなんです。
病気とかもそう。甘いもんばっか食べ続けたら糖尿病になるし、酒ばっか飲み続けたら肝臓を壊すんだし、何の原因もないのにいきなり結果が出ることって、ないんです。
人並みのフツーの生活が、ありがたいったらありゃしない。たまには外食に行ける、誰かのお下がりじゃない服がある。小さくても自分だけの雨風しのげる部屋がある。はー幸せ〜。
コンビニでバイトしてた時、コンビニ弁当ばかり買っていく人って、独特の雰囲気がありました。量はたくさん買っていくわりに、いつ見ても元気ないし、覇気もないし、色気も洒落っ気も、あらゆる「気」がない人が多かった。たまに殺気は漂っていたけど、偶然でしょうか。
私も状況してから、あまりにお金がなかったので、コンビニの廃棄弁当を食べたりしてましたが、もう翌日如実にだるい。朝うんこ出ないし。これがずっと続いたら、そりゃ不機嫌な顔にもなるかもしれません。それでお金がかかってもフツーに自分で料理するようになった。
色々試してみて、昔ながらの日本食に行き着きました。それも、平民が食べていたような粗食です。結果、毎日快眠快便。総合的にすんごいラク。
目先のことだけ考えたらファストフードとかコンビニ弁当でいいけど、この先50年分くらいの費用対効果を考えると、やっぱり自炊がいちばん安くあがると思う。だってファストフードを主食にして成人病になっちゃったら、後からものすごいお金も時間もかかるじゃん。
今日食べるものが、10年後の自分の健康を作ってると思えば、ちょっとくらい良い食材を買って自炊したって、結果的には安いものだと思うんです。
食べ物って食べられる状態になるまでえらいこと手間がかかる。たくあん1枚だって、どんだけの人の手を伝って私のとこへ来たのかと考えると、これはえらいことです。
「you are what you eat」。食べるものと心身状態は確かに関係している。
食生活をゆるい玄米菜食にしてから、どうでもいいことにキレることが確実に減りました。そしたらすんごいラク。キレるって結構なエネルギー使うのね〜、なんて思った。
玄米菜食になってから、他人が何しようが本当にどうでもいい。街でヘンな人を見かけても、赤ちゃんが大泣きしてても、電車が遅れても、別に何とも思わない。
私の食事は、だいたい玄米、おみおつけ、漬物。納豆とか、サバの味噌煮とかを食べることもありますが、基本はこれを一日一食。
家では玄米菜食、外では気にしない!これくらいテキトーな方が、わりと長生きするかもしれません。
安さだけを求めて3店舗回ってる間に、家に帰って読みかけの本が20ページは読めちゃいます。私にはこっちの方が価値のある時間の使い方なんです。
アメリカの先住民は薬草を作る時、必ず祈りと感謝の儀式をするそうです。これをしないと薬草の効果が減るらしい。ま、摘まれる方からしたら、そりゃそうだろうと思う。感謝のない人にあげるもんないっていうか。
毛皮とかウールとか、動物性のものはなるべく遠慮したい。以前、オーストラリアの羊毛工場みたいなところで、羊が大人しくなるまでボコボコに殴られてる映像を見ちゃってから、着たくなくなった。
限られた服しか持っていないと、頭の中がスッキリして、余計なものに煩わされなくなった感じ。忘れ物をしそうになっても早く気がつく。
この状態が気持ち良くて、いっぺん定番のスタイルを見つけたら、もう崩したくなくなった。買った無地Tシャツや下着が、何回か着てみてサイズ感もピッタリなら、もう一回お店に行って、同じ色の同じサイズを1年分買う。
とにかく姿勢は大事。立ち方、座り方、歩き方がヘンだと、もったいないです。これは昔の映画を観て勉強するといい。昔の俳優さんは立ち振る舞いがめっちゃきれい。原節子さんの出ている小津作品とか、オードリー・ヘプバーンのやつとかオススメ。
頭のてっぺんから1本の糸で吊るされてるような感じで立つと、とてもきれいに見えますよ。
服は、色や柄よりも、着た時のシルエットを重視した方がかっこよく見える。
家にいて幸せと思えたら人生の半分は幸せも同然。だって家にいる時間って、人生の中でもかなり長いですよね。
人に羨まれたって、自分が要らんもののために高い家賃を払い、どんどんお金が出ていく状態はどう考えてもおかしい。
家賃2万8千円なので、1ヶ月30日と計算すると、1時間に約39円の家賃が発生!
家にいるのが快適だと、使うお金が減る。
雨とか雪の日なんて、手を伸ばせば濡れてしまえる距離なのに、屋内にいるから全然濡れていないと考えるだけで、嬉しくなって床にうつ伏せになって家にハグしてしまいます。ありがとう!とか叫びながら。楽しすぎる。
台風でも家が守ってくれるから大丈夫。この絶大な安心感は、何にも代え難い。これで家賃2万8千円なんて安いもんだ。ありがたいから、お礼にいっぱい掃除しちゃう。こまめに換気しちゃう。良い音楽流しちゃう。
私は内覧に行ったら、必ず挨拶がてら隣人や近所の様子を見ます。その後も昼と夜に分けて何度か行ってみて、住んでるつもりで周辺を歩き、雰囲気が好きかどうか確かめます。
もうすでにじゅうぶん働いたし、学校も終えたし、そろそろシフトダウンしようと思っている方には、東京周辺でいうと八王子、千葉駅以東、小田急線だと秦野周辺なんかで探すと得策です。
73億人の中から私を選んでわざわざ来てくれたって、なんかありがたいことだなー、と。せっかくウチの財布にお越し頂いたんだから、絶対に無下にできない、と思う。
縁あって私のところに来てくれたお金には、よく話しかけてるんです。ようこそ来てくれてありがとう、と。せっかく会えたんだから楽しんでいってくれ、と。
玄米菜食にすると余分な欲が削ぎ落とされるように思います。
週休5日っていうのは、そりゃもう、想像を絶するほどヒマなんです。人間はヒマに耐えられないから働いてるんじゃないかと、時々思うくらいです。
老後なんて、生きてるかどうかもわかんないウン十年先のことまで心配しない。明日世界が終わってもいいように好きなことを中心にして生きつつ、明日世界が終わんなかった時のためにちょっと準備しとく。それで、もし自分の持ってるもので解決できなかったら、今まで好きなことしてきたんだから、って諦めもつくじゃないですか。それで死んじゃったら大往生だと思う。生きてたら、ラッキー。これくらいのバランスだと、毎日が超快適!
時々、歩くのって禅みたいだって思うことがあります。何も考えずに歩いていると、雑念がどんどん消えていくんです。土手や林、空が広いところとか、自然の中を延々と歩く。考えあぐねていたことの全体がふっと見えて、あ、大したことないわ、と気持ちや視点が切り替わることがよくあります。
自然の中を歩くって、本100冊分くらいの、すごい情報量があると思う。何かを決断しなきゃいけない時とか、本をたくさん読むのもいいけど、こういう手段もあるんじゃないかな。
自分の気持ちや環境って、常に変わっていくのに、5年前の目標にしがみついて、帳尻合わせるためによくわかんなくなってる人をちらほら見かけます。特にやる気のある真面目な人に多いような。
自分が決めたことなら諦められるけど、人に言われて諦めたなんて、死んでも死に切れません。
まずは想像力。これからの時代、どんな資格よりもゲットしといて損はないものです。
相手を慮る想像力は、自分が病気を経験したり、子どもを育てたりすることで培われる人もいると思うけど、そんな大きな経験をしなくても、いちばん手っ取り早いのは本を読むこと。自分が体験しえなかった人生を擬似体験するのが目的なので、ビジネス書とかじゃなくて小説が良いです。
「人間は、自分以外のものを本当の拠り所として生きてはいけないのだ」(釈迦)
将来のことを本気で考えていると、今この瞬間を大切に生きることにどうしても戻ってきちゃう。
例えば電車で目の前に杖をついた老人とか妊婦さんがいても席も譲らないのに、将来自分が困った時のために必死に働くのって、関係ないようで地続きな気がする。それを無視し続けていたら、後からものすごいツケが回ってきそうで、私は怖くてもうできません。
まとめ
「激動の時代」「不確実性の時代」などとよく言われる昨今。
そんな中でも、「年間90万円だけ稼げば生きていける(しかも東京で)」という実感があれば、不安の多くは解消されるのではないだろうか。
読み物としても面白く、おすすめの1冊です。