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『自分の時間を取り戻そう(ちきりん著)』を読んで、「生産性」の本質を知る。

2022年12月17日

いだゆ

長野県出身。関東圏で働くサラリーマン。
明治大学を卒業後、オンワード樫山、ジョンソン・エンド・ジョンソン等に勤務。
趣味は読書(年間200冊ほど)、旅、犬猫。
【Twitter】@tabihonkoe
【Note】https://note.com/yuki423

「生産性」とは何か

「このビジネスは生産性が高い(or 低い)な」
「もっと生産性を考えて仕事をしないと!」
たとえば会社の中でも、ごく普通にこのような会話が聞かれるようになった。

では、「生産性」とは何だろうか?
自分もあまり意識せずにこの言葉を使ったり聞いたりしていたが、突き詰めて考えてみると、イマイチよくわかっていない気がした。

その答えを明確に示してくれたのが、本書だ。
まず、次の一文に、本質がシンプルに凝縮されているように思う。

・生産性とはあくまで「自分が手に入れたいもの」をいかに少ない投入資源で手に入れられたか、という指標です。

 

「時間」と「お金」という投入資源

その「投入資源」の最たるものが「時間」と「お金」であり、それらに対する考え方も示してくれている。

例えば、本書を読んでいて、こんなことを思い出した。
私が受験生の頃、周囲(メディアを含む)では「1日◯時間勉強が必要!」「◯時間以上も睡眠時間を取ると落ちる!」みたいな議論がよくされていた。
それも今考えると、「生産性」の観点からは、あまりに的外れな議論だということがわかる。

・必要なのは、「今までより長い時間勉強すること」ではなく、「今までと同じ時間しか勉強していないのに、今までより高い成績が取れる勉強方法を見つけること」です。

・多くの親は子供が長時間机に向かっていると、「熱心に勉強している」「頑張っている」と喜びます。「なぜこんなに長い時間勉強しないと成績が上がらないのか?もっと生産性の高い勉強方法に変えたらどうだ?」とアドバイスできる親御さんは極めて限られているでしょう。

当時、こんなことを教えてくれる親や先生がいたら・・、と、20年以上も前のことを回顧せずにはいられなかった。

その真理は、大人になった今、仕事に関しても同様のようだ。

・働く時間を増やすのは「暴挙」。そんなことをしたら生産性はますます下がってしまう。インプットが増やせる環境で生産性が上がる人はいません。

・「インプットを減らす」=投入する労働時間、稼働時間を減らすことが大事なのは、それによって私たちは初めて真剣に「生産性を上げよう、上げなければ!」という気になれるからなのです。

・「一生懸命頑張る」のは悪くありませんが、「頑張らなくても高い成果が出せる方法を考えつく方が素晴らしい」ということをしっかり理解すべき。

 

読書メモ

(※個人的なメモのため、一字一句が本文と同じではありません)

なぜ働く時間に見合った成果が上げられないのか?それは考えるのを止め、無思考モードになって目の前の作業に没頭してしまうからです。

ある人が「生産性という観点から意味があるかどうか」を語っているのに対し、それに反論する人は「価値がゼロより上かどうか」だけに注目している、ということはよくあります。

価値の絶対量で善し悪しを語る人と、生産性の高低でその是非を判断する人が混在しているため、両者の意見はまったく噛み合わないのです。

私には、彼ら(Amazonや Apple、Googleなど)が税金をできるだけ圧縮したいと考えるその根底には、「自分たちの方が国家組織よりもお金の使い方に関する生産性が高い」という自負があるのかもしれないと思えるのです。

「どちらのお金がより高い価値を生んでいるか。有効に活用されているか」という視点で考えると、彼らの納税意欲が極めて低くなるのも仕方のないことのように思えるのです。

AppleやGoogle、Amazonのおかげで、私たちの生活がどれほど豊かになったか考えてみてください。納税先としてこれらの企業と国家を自由に選択できる制度があったら、みんなどっちを選ぶのでしょう?

実は今、働いている人の中には、その仕事の価値がゼロ以上の人と、マイナスの人がいます。たとえば生産性の低い産業を守るために余計な規制を作っているような人、こういう人は働かないでいてくれた方が、社会全体に生み出される価値が大きくなります。

ある時文字(テキスト)の生産性の高さに気づいた私は、すっかり気分が良くなりました。当然ですが、2時間の対談を聞くには2時間の時間がかかります。聞き取れる程度に早送り再生をしても、1時間以上はかかるでしょう。でも、2時間分の対談の書き起こし原稿が手元にあったら、多くの人は30分もかからず、全体の趣旨を理解することができます。速い人なら15分ほどでしょう。これはテキストの生産性が動画より4〜8倍も高いことを意味しています。

漫画や動画はわかりやすく、ラクに(受動的に)見ることができます。でも「伝える」という意味では、テキストの生産性は圧倒的に高い。特に伝えたいメッセージが難解な場合には、ものすごく生産性の高いツールなのです。

社会の高生産性シフトというトレンドに照らして考えても、テキストベースの表現ツールはとても有利な位置にあるのです。

テレビ番組を観る若者が減っているのも、頭出しもできず、自分の空き時間にサクッと観ることもできない、あまりに生産性の低い(時間という希少資源を有効活用するどころか、視聴者の貴重な時間を無駄にする)システムだからです。

堀江貴文さんは、彼が運営するFacebookのコミュニティに長文メッセージを書き込む人に対して「相手の時間を奪うな」と怒るそうです。私も、長文メールを送ってくる人には返事もしないし、ましてや絶対に会ったりもしません。

やたらと長いメールを送ってくる人や、「とりあえずご挨拶を」と言ってくる人は、それだけで、生産性の概念を持たない人だとわかります。自分の時間の貴重さに気づいていないため、他者の時間の貴重さにも無頓着なのです。

生産性への意識が低いことを自分の言動によって示してしまうと、それだけで排除されてしまう時代になっているのです。

大前研一さんは日立製作所で研究者として働いていた頃、自分のデスクを離れて社内の敷地を散歩しながら考えていたら、勤労部からサボっているように見えるからやめてくれと怒られ、「自分は頭の中で考えてここ(裏庭)でも仕事をしているんですよ」と答えたエピソードを紹介しています。

私の場合は温泉や海など水の中に入ると一気にリラックスできるので、書籍の構想など大きなことを考える時は、よくビーチリゾートに出かけます。

「今、自分が手に入れたいモノを手に入れるための、最も生産性の高い方法は何なのか?」と問い続けていれば、何をするにも生産性がどんどん高くなります。手に入れたいのが物理的なモノだけではなく、「安らぎ」や「気分転換」であったり、「革新的なアイデア」や「ユニークな発想」であっても同じです。

何を手に入れるにしても生産性の高い方法と低い方法があるのですから、「これを手に入れるための、もっとも生産性の高い方法はなんだろう?」と常日頃から意識的に考える癖をつければ、限られた時間やお金、そしてエネルギーを最大限に有効活用でき、欲しいモノを手っ取り早く手に入れられるようになるのです。

仕事というのは、過去のやり方を振り返り、改善方法を考え、試行錯誤しながら少しずつ生産性を高めていくもの。

生産性を上げておけば、万が一の時にも労働市場での評価が高くなり、転職しやすくなります。私なら生産性の概念も理解していないバカな上司など無視して、どんどん生産性を上げていきたいです。

「労働市場での評価を上げること」を意識しながら働くと、生産性を上げることが自分にとって必須の、かつ重要な課題になります。なぜなら労働市場で評価されるのは、まさに生産性の高い人だからです。

デキる人とは圧倒的に生産性の高い人であり、残念な人とは自分と周囲の人の時間を平気で無駄にする、生産性の低い人のことなのです。

30代になってまだ一度も「この前と同じレベルの成果を出すのに、次は前回より3割、働く時間を減らしたい。そのためには、仕事のやり方をどう変えればいいんだろう?」と考えたことのない人は、マジで「それはとてもヤバい状態なのだ」と理解してください。

生産性の高い人は、これから現れる様々な「生産性を高くする技術やサービス」を利用し、多忙な生活を抜け出すことができます。一定以上、社会の生産性が高まれば、週休3日や週休4日制さえ可能になるかもしれません。一方、生産性の低い仕事を続けていく人は、多忙な生活に追いまくられ続けます。そしてどこかの地点でキカイに置き換えられ、失職してしまうのです。

お金と時間は、両方とも「見える化」しよう。

お金と時間。どちらも重要な希少資源ですが、この二つには大きな違いがあります。それは「お金は見えやすいが、時間は見えにくい」ということです。

見えにくい時間は、見えやすいお金に比べてしばしば軽んじられます。有限感の持ちやすいものは、そうでないものより貴重に感じられるからです。

見えないものについては「どれほど減ったか」を自然に感じ取ることが難しい。

今20代の人は、この120個のマス目のうち、すでに終わった部分を塗りつぶしてみてください。そうすれば20代があとどれくらい残っているのか、視覚的に確認できます。30代、40代の人も同じです。こうやって「時間を見える化」すれば、お金と同様、時間もとても大切な資源だと思い出せるでしょう。

「増えた時間」を認識するのは誰にとっても容易ではありません。それよりも、会社の近くへ引っ越すことによって高くなる家賃や、それが原因で減ってしまう預金残高の数字の方が圧倒的に見えやすいのです。このため多くの人が「時間よりお金が大事」だと誤解してしまいます。

見えやすい「お金」の方が、見えにくい「時間」や「自分の健康」より、はるかに大事にされている。

時間の価値が非常に大きいと考える人は、安い値段で時間を売りたいとは考えません。そして、できるだけ高く時間を売る方法は何かと考えるようになります。

お金については、いかに使う額を減らすかという節約術に頭を悩ませる人が多いのですが、それよりも「できるだけ有効に使おう!」と考える方が有益です。

「ここ半年で、何のために使ったお金が最も有効だったか」を振り返ってみてください。

月に1万円あれば、年に12万円になります。それだけあればアジアの国に1週間の旅行ができます。フィリピンへの英語留学だって可能です。

月1万円の家賃上乗せで通勤時間を30分短縮できるなら、月に20時間の余裕時間が手に入ります。これは1万円で20時間という時間を購入するのと同じ行為です。もし、Amazonで「20時間分の時間」が1万円で売られていたら、思わず買いたくなりませんか?

家賃の1万円アップで通勤時間を30分短縮するのは、毎月Amazonで20時間を1万円で定期購入するのと同じです。

「価値あるお金の使い方」を意識するようになると、「自分は何にお金を使うと楽しく暮らせるのか、何にお金を使うと最も幸せな気分になれるのか」が、わかるようになります。そして、自然とそれら大事なことにお金を使うようになり、反対に無駄遣いが減って、貯金もできるし、生活も楽しくなるのです。

お金を有効活用するというのは、貯金を増やすということではありません。できるだけ大きな価値を自分に与えてくれるものにお金を使うということです。

大事なのは無駄遣いを減らすことではなく、価値ある支出を増やすことなのだということを忘れないようにしましょう。それがすなわち「お金の生産性を上げる」ということなのです。

実は最近の私にとって最も希少な資源は、「頭がきちんと働く時間」です。その貴重な4時間を何にどれくらい使うべきかと、真剣に考えます。

生産性の高い生活とは、「時間やお金など人生の希少資源を最大限有効に活用し、自分が欲しいモノを手に入れる生活」です。

最も大事にすべきは「自分が今、持っている希少資源の生産性」であって、過去に使ってしまった希少資源の正当化ではありません。すでに投入してしまった資源に拘泥し続けると、いま持っている資源まで無駄になってしまいます。
(不妊治療や資格試験の例)

お金にしろ時間にしろ、インプットできる資源は有限なので、永久にインプットを増やし続けることはできません。だからインプットを増やすことでしか成果を上げられない人は、どこかで行き詰まってしまうのです。

インプットを容易に増やせる状況においては、誰も生産性を上げようとは思わない。

生産性を上げるためにはインプットを減らせばよいのです。具体的には、労働時間を減らす、家事や育児に使う時間を減らすことが、生産性を上げるのに役立つのです。

「投入する時間を制限する」ことが、生産性を上げるための鍵。

1日の総労働時間を制限する。

絶対に17時にオフィスを出る必要のある人は、仕事を17時に終わらせるにはどうすれば良いか、どんなスキルを身につけなければならないか、様々に考え、試してみています。その思考と実践がその人の生産性を上げ、成長を促すのです。

まずは今の仕事を、特定の時間で終わらせると決めてしまいましょう。たとえば、今21時までかかっている仕事は18時に終わらせると決めてしまいます。そして、そのためには仕事のやり方をどう変えればいいのか、よく考えてみるのです。

1日を3時間×3個に分けた予定表をつくる。

大事なのは、ありえないと思えるくらい時間の足りない予定表をつくることです。そうしないと生産性は上がりません。

「忙しくなる前に」さっさと休暇の予定を決めてしまう。「ヒマになったら休暇をとろう」と考えている多くの人が休みを取れていません。

休暇の予定を先に入れるのは、「休暇をとるため」ではなく「生産性を上げるため」。

年の初めに年間の休暇予定を立てる。そして家族や会社の同僚など、早めに周りの人に宣言してしまいます。交通機関や宿泊先も可能な限り早めに予約してしまいます。大事なことは、仕事が忙しくなる前に予定を立てて宣言することと、数ヶ月前には予約を入れてしまうことです。

仕事以外のこともスケジュール表に書き込む。

あの美術館に行きたい、気になっていたレストランに行ってみたいといった「やりたいこと」の予定を、先に(無理矢理にでも)カレンダーに入れてしまいます。早めに友達を誘って前売り券も買ってしまい、その上で、その予定が問題なくこなせるよう「知恵を絞る」のです。

外出の予定だけではありません。「録画している映画を観たい」「積ん読になっている本を読み切りたい」といった家の中で行う予定に関しても、予定表やカレンダーに正式なスケジュールとして記載します。

予定も立てずに始めてしまうと、あっという間に5時間かかってしまう作業でも、事前に予定表に時間を確保することで、「どうすれば衣替えを2時間で終わらせられるか?」と「始める前に考えるプロセス」に変更できます。この思考が、生産性を高めるのです。

実際にはなんでもソツなくこなせる人より、「できないことも多いけれど、ある分野においては突出している」という人の方が成功しやすい。

「そもそも全ての仕事をやる必要はない」と考えるだけで、仕事の生産性を大幅に上げることができる。どんな人にも、そしてどんな職場でも、極めて価値の高い重要な仕事と、それほど価値の高くない仕事があります。それらを「すべてやろう」と考えると、なぜか「大して重要ではない仕事」ばかりに時間が使われます。

本来は常に「価値の高い重要な仕事」から手がけ、それらに十分な時間をかけた後、残った時間で価値の低い仕事に手をつけるべき。

「全ての仕事をやる必要なんてない。重要な仕事だけ終わればいいんだ」と思っていると、難しくても重要な仕事に最初に手をつけることができます。

「全部をやる必要がある」と考えている人の多くは、やれば終わることからやり始め、付加価値の低い作業で仕事時間を埋め尽くしてしまいます。これでは肝心の重要な仕事では成果が出せません。

「お金があるから、やりたくないことを他者に任せられる」のではなく、「自分の時間を価値が高いことに集中して使っているから効率よく稼げ、それ以外のことを他者に任せる経済的な余裕が得られる」のです。

気乗りしない人付き合いを止めるのも、生活の生産性を高めるのに効果的です。何度も断ると悪いから、自分だけ行かないのは申し訳ないからといった理由で、億劫な飲み会に参加する必要はありません。

時間の家計簿をつける。自分の生活の中で「生産性の低いこと」「やめるべきこと」を探すには、1週間でいいので、朝から晩まで何をしていたか、詳細な行動記録を作ってみるのが役立ちます。

私がブログで紹介する「イチオシの本」は今でもリアルな書店で見つけた本ばかり。ネット書店は「買いたい本を買う」生産性は高いけれど、「面白い本と出会う」という目的に関しては生産性が低すぎる。

これからは、空き時間、空きスペース、空き道具、空き才能など、あらゆる「有効活用されていないもの」の生産性を上げるビジネスが生まれてきます。

私が買ったのはテレビの全自動録画機ではなく、私の人生の時間なのです。

運転時間という、生産性の低い時間。

今まで5日かけてやっていた仕事を、今は3日でやっている。それなのに「忙しくなった」のではなく「余裕ができた」とさえ感じられる。

本当の意味で「売れる」というのは、「自分のペースで仕事を選んでいても、仕事の依頼が途切れない」ということだ。それだけの技術を身につけ、それだけの実績を上げなければ、いつまでも長時間労働の生活からは逃れられない。

やるべきことは頑張ることではなく、頑張らなくてもいいだけの技術を身につけることだ。

フリーランスの世界には、自由を求めて独立したのに単価の安い仕事に追いまくられ、その自由を失ってしまう人がたくさんいる。その一方、限られた仕事を選んで引き受け、適切な労働時間で高い収入を得ている人もいる。

生産性を意識すると、人生の希少資源である時間やお金を、自分が本当に手に入れたいモノだけのために使えるようになります。

 

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