初めて引っかかった
とうとう引っかかってしまった。人生で初めてだ。
振り込め詐欺でも、美人局でもない。健康診断の数値の話だ。
しかし、それなりにショックな出来事だった。
振り返ってみると、ここ数年はめっきり運動の機会が減っていた。
以前は、週5でフットサルをするなど、かなり運動好きな方だった。
しかし最近は、転勤・引っ越しなどによる環境の変化や、テレワークの影響から、すっかり運動不足になってしまっていた。
今回の健康診断の結果も、恐らくこの運動不足が大きな原因の一つではないだろうか。
そんなことを考えていた時にふと、この『運動脳』という書籍の広告を、日経新聞で見た。
その5秒後にはKindleで購入していた。
非常にボリュームのある書籍だったが、どの項目も興味深く、気づけばあっという間に読み終えていた。
これは「知的生産」の本だ
もともとは、健康面が気になって読み始めたが、読み進めるうちに、「これは知的生産の本だ」と気がついた。
(タイトル的にはそりゃそうなのだが、そんなこともわかっていないほどのジャケ買いだった)
以下、読書中にとった膨大な量のメモの中から、一部を抜粋。
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・身体を動かすことほど、脳に影響を与えるものはない。
・脳は頭を働かせようとするより、身体を動かすことでこそ威力を発揮する器官。
・脳は相当な量のエネルギーを消費する。重さは全体重の2%にもかかわらず、身体が必要とするエネルギーの20%を使っている。
・海馬はストレス反応のブレーキとして働き、そのブレーキペダルは運動によって強化される。
・額のすぐ後ろにある「前頭葉」もまた、ストレス反応を抑制している。その前頭葉の前の部分「前頭前皮質」と呼ばれる領域は、高次認知機能を司っている。例えば衝動を抑えたり、抽象的思考や分析的思考を行ったりする。ストレスを感じている時、前頭葉は感情が暴走しないように、また理性を失った行動に出ないように働いているわけだ。
・前頭葉も、やはりストレスによって萎縮する。そして実際に、極度の心配性の人は前頭葉の各部位が小さい。
・前頭葉が活発化すると、気持ちが穏やかになりストレスは減る。扁桃体がつくり出した不安をはねのける力がつく。
・ストレスを抑えたければ脳の「思考」領域、つまり前頭葉の機能を促せばよい。そして、運動は海馬だけでなく前頭葉も強化する。海馬と前頭葉は、ともに身体を活発に動かすことで何より恩恵を受ける部位なのだ。
・定期的に運動すれば、前頭葉と扁桃体の連携も強化されることがわかっている。そうなると、前頭葉はさらに効率よく扁桃体を制御できるようになる。
・定期的に運動を続ければ、期間は長くかかるものの、前頭葉は物理的に成長までする。
・運動を終えるとコルチゾールの血中濃度が下がり、次回からはあまり上がらなくなる。また、ストレス反応のブレーキペダルである海馬と前頭葉が強化され、不安の引き金である扁桃体の活動が抑えられる。さらに、「ニューロンの乳母」が増え、脳内の興奮を鎮めるGABAの作用が活発になる。加えて筋力がつき、ストレス物質を無害化する働きが促進される。こういった全ての効果が、一挙に得られるのである。
・週に2回以上運動をしている人は、ストレスや不安とほぼ無縁であることがわかった。また、運動をしている人は攻撃的な面が少なく、シニカルな態度も見られなかった。
・コルチゾールの血中濃度が増えると、腹部に脂肪が蓄積する。その上、食欲が増し、高カロリーのものが食べたくなる。だが、運動によってストレスにうまく対処できるようになればコルチゾールの血中濃度は下がり、やがては食欲が収まって、蓄積された脂肪も減り、その一方でカロリーの燃焼量は増えていく。
・身体を動かすことで、「心拍数や血圧が上がっても、それは不安やパニックの前触れではなく、良い気分をもたらしてくれるものだ」と、運動が脳に教え込むのである。
・週に少なくとも2、3回は心拍数が大幅に増えるような運動をしよう。たとえ動悸が激しくなっても、脳はそれが恐怖から来るものではなく、プラスの変化をもたらすものであることを学習する。
・今では、運動をした直後にドーパミンの分泌量が増えることがわかっている。運動を終えた数分後に分泌量が上がり、数時間はその状態が続く。そのため運動後には感覚が研ぎ澄まされ、集中力が高まり、心が穏やかになる。頭の中がすっきりして、物事に難なく集中できるようになる。そして、唸りのような雑音も消えるのだ。
・理想的な心拍数の目安は、最大心拍数(220から年齢を引いた数字)の70〜75%だ。
・長時間座りっぱなしでいると集中力が損なわれるだけでなく、不安やうつになりやすくなる。さらには認知機能も損なわれて、頭の回転が遅くなるのだ。
・運動は抗うつ剤と変わらず、それどころか「ノーリスク」でセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンを増やせる。
・最強の脳物質「BDNF」。その生成に運動ほど効果的なものはない。
・心拍数がある段階まで増えると、BDNFが大量に生成されるのである。
・運動ほど海馬の細胞新生を促せるものはない。
・定期的に運動をする人には皮肉っぽい気質や神経質な性格の人が少ないことがわかった。
・毎日、意識的に歩くと認知症の発症率を40%減らせることを突き止めた。認知症の一番の薬は「歩くこと」なのだ。
・脳の最も重要な仕事は「移動」。地球上に初めて現れた脳細胞の最も大切な仕事は、その生物を移動させることだったのである。
・「移動距離」と脳の大きさは比例する。
まとめ
本書を参考に、私も久々に運動の習慣を日常に取り入れた。
すると、数日もしないうちに、明らかに「体調・体重・脳のパフォーマンス」に良い変化が現れた。
これからの何十年という人生のパフォーマンスを上げるため、と考えると、非常に投資対効果の高い1冊でした。