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やっぱり旅は良い!〜『かわいい我には旅をさせよ ソロ旅のすすめ( 坂田ミギー)』〜

2022年11月26日

いだゆ

長野県出身。関東圏で働くサラリーマン。
明治大学を卒業後、オンワード樫山、ジョンソン・エンド・ジョンソン等に勤務。
趣味は読書(年間200冊ほど)、旅、犬猫。
【Twitter】@tabihonkoe
【Note】https://note.com/yuki423

やっぱり旅は良い

旅が好きだ。とりわけ、一人旅が好きだ。
独身時代はもちろん、結婚してからはさすがに行きづらくはなったけれど、タイミングを見てはちょくちょく一人旅をしていた。

それが、このコロナ禍によって、大きく状況が変わってしまった。
特に海外には、もう3年近くも行っていない。

そうなると、もう一つの趣味である読書も、自然と「旅」関連のものに食指が動くようになる。
そんな時に出会ったのが、この本だ。

著者の坂田ミギーさんは、広告のクリエイティブディレクターをされる傍ら、「旅マニア」というサイトを運営されている。
31歳で世界一周の旅に出られ、これまでに40カ国ほどを訪問されているそう。

読み終えての素直な第一感としては、「やっぱり旅はいいなあ」、というものだ。
もちろん、本書にも様々なエピソードが紹介されているように、旅には不便なことや、危険なこともたくさんある。
それでも、それを補って余りあるだけの効用が、旅にはやはりあるのだ。
たとえば、こんなふうに書かれている。

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素晴らしい景色に出会ったとき、他人と「きれいだね」「すごいね」と共感したい人は、「ソロ旅だと誰とも感動を共有できない」と思っているかもしれないが、それは違う。わたしは、わたしと話しているのだ。

ただひたすらに自分と話せる時間は、普段はあまり持ち得ない。強制的にでも、自分と向き合って会話するイベントがしこたま発生する。それもまた、ソロ旅のいいところなのだと思う。
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旅で「内省」を深める

「わたしは、わたしと話している」。
この一文を目にした時、ハッとした。
「自分」と対話をする機会は、日常生活の中では、ついつい疎かになってしまっていないだろうか、と。

この情報化社会だ。毎日溢れる膨大な情報の中で、「内省」を深めることは日々難しくなっている。
たとえば、以下のような「内側から湧いてくる感覚や言葉」も、普段の生活ではその「ノイズ」に邪魔をされ、なかなか気づきにくくなってしまっていると思う。

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内側からふつふつと湧いてくる感覚や言葉を観察してみても、おもしろい。こういう時自分はこう思うのか。こんなことに気づけるのか。これは苦手なんだな。じゃあこっちに行くのはどうだろう。
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人間は「環境の生き物」と言われる。そんな環境を強制的に変え、自分と対話するためにも、一人旅は有効なのだ。

 

隣り合わせの「危険」から学ぶこと

危険、という点では、モロッコのマラケシュにある「カフェ・アルガナ」で爆破テロに遭遇した際のエピソードが強烈で、印象的だ。
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確かに、海外旅行は危ない。家でぼーっとしているより危険な目に遭う確率は高い。しかし、それは世界の今を目の当たりにすることでもある。なぜテロが起きているのか、スリが多いのか、ピストルを突きつけられるのか。そこには理由があって、圧倒的な現実がある。
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私も、初めて行ったインドでの一人旅で、初日に2人組の男にiphoneを強奪されたことがある。
その時は絶望と不安しかなかったが、今振り返ってみると、非常に貴重な経験と学びができたと、心から思っている。
それ以前よりも、日常生活でもサバイバル能力というか、不測の事態への対応能力が上がったという実感が確実にあるのだ。
そんな観点からも、やはり旅の効用は計り知れない。

 

読書メモ

(※個人的なメモのため、一字一句が本文と同じではありません)

世界は広い。まだ知らない世界が、この世にはたくさんあるんだ。

既に日本で関係を持っている人間と一緒にいると、意識・無意識は別として、旅先でも「相手の中に内包されている自分」を保たなくてはいけない。

友達や恋人がいると、「これまでの自分はこうしているから」と、リミッターがかかってしまう。

同伴者のいる旅が「旅」だと思いにくい理由の2つ目は、誰かと一緒にいると「その人を気づかうこと」も重要なミッションになってしまうから。

誰かといると旅先でも「いつもの空気」を味わえてしまう。それは安心感にもなるけれど、今ここにしかない世界に集中できない原因となってしまうのだ。

現地での出会いが量産されるのも、ソロ旅の醍醐味だ。

旅といっても、大げさなものでなくていい。ただひとりで、いつもと違う近所の道を歩いてみるだけでも、それは小さな旅。全てを知ったような気がしている半径5キロメートルの範囲でも、まだ歩いたことのない道はたくさんあるし、まだ入ったことのないお店だって山ほどあるはずだ。

たとえ長く住んだ場所だとしても、案外知っているのは一部でしかない。近所の道をいつものルートから外れて歩いてみる。すると途端に見知らぬ街だ。そこは初めて歩く道。初見の景色に溢れている。旅気分でふわっと心が軽くなる。

遠くになんか行かなくても、慣れ親しんだエリアから自分を抜き出して、意図的に非日常に配置すれば、もうそれは立派な旅。

ご近所旅の時は、スマホを置いていくのがおすすめ。

あなたも、あなたと一緒に近所に隠れた宇宙を探しに、ちょっとお散歩がてらの旅に出かけてみてはどうだろう。

もちろん着衣のままでも楽しめるけれど、裸になれると、世界はもっとおもしろい。全身で受け止められる感覚が格段に増え、世界が自分と一体になったかのような気分まで味わえる。

全裸テント島暮らしでわかったこと。それは、たった一つの経験で、いともたやすく人間の常識は変わってしまうということである。もしかしたら、いま常識だと信じ込んでいるものは、別に守らなきゃいけないものでも、なんでもないのかもしれない。

「旅は逃げない」。そんな言葉も聞かれるが、旅をしたい情熱や夢、興味が失われることもあるし、旅先自体が変わってしまう、無くなってしまうことだってある。だから、いつでも思い立った日に、重い腰を上げて動き出したい。ぼーーっと横になっている間に、失われていくものほ確実にあるのだから。

「僕の友達なんて、『こんにちは』しか知らないくせに、『俺は日本語が話せるぞ』って自慢しているよ。だから英語で会話ができるあなたは、もっと自分を誇っていい」

「アメリカで生まれ育った人は、英語しか喋れない人ばっかりだよ。だから、二つ以上言葉が話せる人はそれだけですごい。英語が得意じゃないからって萎縮する必要はないんだ。少し話せるだけでえらいし、勉強しているのも尊敬するよ。だから自信を持って話そうぜ」

わたしがこれまでに会った旅人の中で、最も荷物が少なかったのはインドのデリーで出会った日本人旅行者だ。彼はたった一枚のコンビニ(セブンイレブン)の袋を、旅行用バッグとして使っていた。そのレジ袋に入っているのは、替えのパンツが1枚、歯ブラシ、石けん、パスポート、クレジットカードと少しのお金。あとはおやつにバナナが入っていた。

彼いわく「誰もレジ袋に貴重品が入っているとは思わないので、逆に安全」なのだという。これまで長く旅をしていて、盗難に遭ったこともないらしい。レジ袋ひとつでどこにでも行けるので、長距離移動も苦にならない。

最終的に残ったものは、大きなバックパックと小さなバックパック、このたった二つに入る分だけ。次第に私は「どんな気候でもたったこれだけの荷物があれば問題ないのに、日本ではなんであんなたくさんの物を所有していたのかしら」と思うようになっていった。

パスポート、クレジットカード、現金、スマホ、充電器、プラグ変換アダプタ。これさえあれば、あとはどうにかできる。

もし足りないものがあれば、現地で調達するのも楽しい。旅先で買った必需品は、その後の旅でもずっと活躍してくれる。頼もしく思い出深い品になるからおすすめだ。

人間の住んでいるエリアを旅しているのなら、現地の人が使っているもので代用すればよい。例えば、マサイ村で歯ブラシを忘れたとする。マサイは私たちのようにプラスチック製の歯ブラシを持っていないこともあるが、歯磨きに適した植物を知っている。彼らに頼んで、歯磨き用にその木の枝をもらえば問題ない。忘れ物は、思い出をつくれるチャンスだ。

私が今の夫と出会ったのは、メキシコのATMでクレジットカードを置き忘れて紛失したことがきっかけである。やらかした瞬間は、全身から血の気が引いたのち、頭で血液が沸騰して「ぎゃーーー!」と叫びたいくらい気が動転していた。けれど、それが人生という旅路にとっては決して悪いことだけではないのよね。人間万事塞翁が馬。

毎日遊んで楽しく暮らすことと、私の幸せはイコールではなかった。半月ほどゴアにいて遊び呆けていたのだが、ある日、急に虚しさで胸がカラカラになった。なんでだろう。好きなことしかしていないのに。理想とする生活のなのに。

食べて、飲んで、踊って、遊んで。うんこ以外何も生み出さず、ただただ消費だけをする人間になった自分には、飢餓感も危機感もなく、ストレスもない代わりに達成感もなかった。そりゃそうだ。本質的には何もしていないのだから。

もしこの日々を延々と続けたら?と考えると、ぞっとした。そんなの耐えられない。たった2週間だけれど、やってみてわかった。楽しいだけじゃ、人生はつまらない。遊んで暮らすだけじゃ、面白くないのだ。

いつも面倒だと悪態をついていた仕事の数々は、確かに面倒だしやりたくはないのだけれど、自分が人生を通じて成し遂げたいことに向かって、ちょっとずつでも進んでいけること。その実感がある方が、本当の意味で楽しくて、面白い人生になるのだと旅が気づかせてくれた。

だから、何でも一度やってみるのは大事なのだ。想像してみるのと、やって体感するのとは、えらく違うもの。

「自分探しの旅」って言葉は嘲笑気味に使われることが多いけど、これって日常的に自分を押し込めている価値観、つまりは同調圧力から抜け出して、身ひとつで新しい場所に行った時、どんな自分があらわれるかってのを体験して、本来の自分を見つける旅のことなんじゃないかと思う。

あの日あの時あの場所で、どんな格好でどんな感情で旅をしていたか、思い出すための手がかりがないのはちょっとだけさびしい。

これから旅立つあなたには、せひ自撮りをしたり、周りの人との撮影を楽しんだりしてほしい。それらはきっと、いつまでも旅の幸せを思い出させてくれるはずだから。

カリフォルニア大の研究によると、笑顔を自撮りすることは幸福度アップにつながる。

『地球の歩き方』はトラブル集を読むだけでも充分に価値がある。

やり手の犯罪グループは、わざと偶然を装って仲良くなり、信用させる手法も駆使してくるからご注意を。ともかく、夜間の外出は女性だろうと男性だろうと集団だろうと危険な場合が多い。

ウィル・スミス主演の映画『フォーカス』の前半に出てくる巧妙なスリや詐欺の手口は、旅行中に注意すべきポイントの参考になる。

犯罪者だって効率よく稼ぎたい。そうなると狙い目は観光地や都市部といった、人がたくさんいるところとなる。

というわけで、私は海外旅行の際にも、国際空港があってアクセスが良好な観光地、たとえばマニラやジャカルタ、サンパウロ、ブエノスアイレスなどはほどほどにして、そこから一足のばしたエリアを旅するようにしている。その方が旅先で出会った現地の方々からとも、心の通ったやりとりがしやすいと思うからだ。

楽しいだけの旅もいいけれど、世界の課題を垣間見る。そんな旅も、人生を深めるきっかけになるんじゃないかと思うのだ。

ひとりでウロウロしているとRPGのような出会い・出来事が起こりがちで、これこそが旅の面白味であろう。

現地の人と友だちになれた!と思って遊びに行ったら、監禁されて有り金すべて奪われた、とか。列車で一緒になった人が親切にお菓子やジュースを分けてくれたので、それを口にしたら実は睡眠薬入りで、起きたら所持品がすっかり無くなっていた、とか。そういう目に遭っている旅人は少なくない。

アキラと出会ってから、私の旅は柔らかくなったように思う。心を開けていれば、素敵な出会いもやってくる。トラブルや面倒を避けるのに必要なことは、全員をシャットアウトすることではなかった。問題を見極める知識やスキル、信頼すべき相手と心を繋ぐ勇気こそが必要だったのだ。

それからというもの、私は旅先で知り合った人とコミュニケーションをとることが増えた。客引きも、物売りも、食堂のおばちゃんも、商店のおじちゃんも、好奇心で話しかけてくる子どもたちとも、できるだけ声をかわすようにし、それを楽しもうと心がける。すると、自分の中にたくさんの感触が入ってくるようになった。その感触たちが、旅の中身を、そして人生を色濃く形作ってくれている。

ネットが普及する前、2000年代までは、まず海外旅行の宿は予約できないのが当たり前だった。

今では事前に手配しておけば「宿がない!」とバックパックを肩に食い込ませながら涙を流して歩き回る必要もない。けれど、人生も旅も、思い通りになりすぎるより、たまには予想外の出来事が起こってほしいと思ってしまう。もし、あの日スムーズに宿が見つかっていたら、きっとモジャとニョロとは話すことすらなかっただろう。

自分の思い通りにいかない。計画通りにならない。それがおもしろいと思っている節が、私にはある。

私がケニアを好きな理由はナイロビ近郊にあるスラム街キベラにある。

オギラ先生を筆頭に、人生に影響を与えてくれた尊敬すべき人々が最も多い国。それがケニアだ。

 

まとめ

自由に旅ができる世界が早く戻ってきてほしい。
そんなことを改めて思った1冊でした。

 

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